世界≠幻
私が学生時代から敬愛・尊敬している作家に辻仁成さんがいる。
辻さんの著書に「世界は幻なんかじゃない」というフォトエッセイがある。
ハードカバーで読み、文庫でも読み。という感じで無意識に好きな1冊である。
最近、辻さんの「孤独にさようなら」という小説を読んだ。
この本に関しては、いつか文庫化されたら読もうと思っていたら、文庫化されずに現在に至ってしまい、読んでいなかった。
そしてついにネットで購入し、読むことができた。
辻さんの著書「ミラクル」でコラボした望月通陽さんのイラストが各章に描かれており、読む前はミラクルのような童話を想像していた。
しかし、現代が舞台の小説であった。
東北地方に地震によって大津波が襲い両親を失った少年が主人公という設定となっており、本書が発売された2007年(発表されたのは2006年)時点で、まるで2011年の東日本大震災を予言しているようで、ぞくっとした。
この作品の中で、何回か「世界は幻じゃない」という言葉がでてきた。
辻さんの思想を語る上で「世界≠幻」は重要なキーワードの1つであるのだ。
内容は心が温まる、生きる勇気が湧いてくるものであった。